2008年08月05日

[新刊情報]風帝国よりお知らせ。

swn01.jpg新刊、カバーも入稿完了です。
というわけで新刊カバーをプレビューで表示してみた次第。
今回も素敵なカバー&表紙&本文イラストは、
サークル「SOA & 鴨工房」の長坂里さんに描いていただきました。
(DODO ISLAND→http://dodou.client.jp/
新キャラ、ヴィンセントが妙に格好良くて嬉しい限り。
えーとそれから、印刷代金が計算できなくなっていたようなので、改めて新刊案内。
800円なんて、無理でした……。

ソード・ワールドノベル第2巻「使者は来たる、黒き夢より」
(新書版/224P/オンデマンド/フルカラーカバー&帯/1000円)
 今回の夏コミでご購入された方には、嬉しい特典付き。詳細は当日のポスターをご覧下さい。

いつもやらない事をやってみよう特集、ということで、
新刊から本文プレビューです。
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 翌朝、宿はやはり幽霊の話でもちきりだった。
 ラレインは嬉々としてあちこちで話を聞き回っているが、少なくともこの宿の中には自分たち以上の情報を持っている人間はいないようだった。

「で、本当にアンデッドだったわけね」

 シーザスは溜息をついてフォークを置いた。

「本当だとすると、ちょっと気になるわよね。何かよっぽど思い残すことでもなければ、普通はならないもの。アンデッドなんて」
「別に恨みだろうが何だろうが、勝手に自分で晴らしてくれりゃ面倒がなくていいけどな」
「馬じゃねえ。言葉も通じないしね」

 戻ってきたラレインが、やけに真剣な表情でぶつぶつ考え込む。

「おい、会う気かよ」

 不安げにその様子を見てセルシャーナスが声をかけるが、どうやらあまりその耳には入っていないようだった。

「わたしも見たかったです」

 ラルサシャスは小さく呟いた。
 結局昨夜、あの部屋の中で幽霊の出現に気がついたのはセルシャーナスとラレインだけだったのだ。その事を、朝から残念そうにラルサシャスは幾度も繰り返していた。

「気分のいいもんじゃねえぞ。それより、吟遊詩人<バード>のお出ましだ」

 示された入り口を見れば、吟遊詩人は所在なげにそこに立っていた。屋内なのに帽子を被っているのも昨日のままだ。
 ラレインが挨拶しがてら昨夜の出来事を訊ねると、ヴィンセントはきまりが悪そうに視線を逸らせた。

「ああ……それ。もう何回も言われたんですけど、私、全然気づかなかったんですよね」
「うそ、あれだけ興味を示してた本人が?」
「同じ事をもう何回も言われてますよ。疲れてたんでしょうか、私」

 逆に質問されて、ラレインは返事に困る。ヴィンセントは本当に落ち込んだ様子で、手近な椅子に腰を下ろした。

「よう、ねぼすけ吟遊詩人<バード>。せっかくのチャンスを逃したってな」

 宿の主人が軽口を叩きながら料理を運んでくる。料理はシーザス達の朝食だが、主人はヴィンセントの前にもカップを置いた。中身はどうやらミルクだ。

「私が朝は遅いって、知ってるじゃないですか。いつも通りですよ。むしろ今日はいつもより早いくらいで」
「それより、昨日はとうとう、幽霊の復讐が始まったって話だ」

 吟遊詩人の泣き言は完全に無視して、料理をテーブルに置きながら主人は続けた。気の毒そうな視線でヴィンセントを見つめていたラレインが視線を戻す。

「何かあったの?」
「人が死んだ。とはいっても、ラギルさんじゃなくて使用人だけどな。飼ってた猟犬と、そいつの飼い主がやられたみたいで、朝は教会とかでえらい騒ぎになってたぞ」

言われてみれば、かすかに犬の鳴き声も聞こえていた気がする。

「へえ……犬」

 しかしラレインはそう言っただけで口を閉ざした。

「気の弱い連中は尻尾を巻いて、さっさと北に出発してる。あんたらも話を聞きに行くつもりなら、急いだ方がいいんじゃないか?」

 マスターが淡々と続けると、ヴィンセントは慌てた様子でカップを置いた。

「そういう事は早く言って下さいよ!」
「いえ」

 ラレインは短くそれを遮った。

「隊商なんかに話を聞きに行く必要、もうないじゃない。被害者が出たんでしょ? だったら、昨日マスターが言ったみたいに、その家を訪ねた方がよっぽど確実な情報が手に入るわよ。この町に来る冒険者って、この時期はほとんどが護衛の仕事の最中でしょ。余計な事件に構ってる余裕はないでしょうし、その商人とやらも幽霊の正体を探る、とか幽霊を倒すって言えば話してくれそうだけど」
「そこまで首を突っ込むのかよ?」

 眉をひそめたセルシャーナスに、ラレインはにやりとして続ける。つい最近に見た覚えのある笑みだ。……嫌な予感がする。

「そこから先は話次第でしょ。もし、先方がどうしてもって言うのなら、話を聞いて幽霊事件の解決を引き受けてもいいわけよ」
「どういうことです?」

 ヴィンセントが難しい顔をして尋ねる。

「つまり、あたしたちは幽霊事件の話を聞きたい。あちらはきっと幽霊事件を片付けたがってる。だったら、わざわざこっちからお土産をぶらさげて話を聞きに行ったりしなくても、向こうに『探す手間もなく冒険者が雇えた』って思わせておけば、あたし達は土産を用意する事もなく話が聞ける上に、もしかしたら依頼料まで手に入っちゃうかも」

 要するに、自分が聞き出したい話を逆に相手から喋らせるように仕向ける、という事だ。
 興味のないふりを装って、話を聞き出したい相手にまるで自ら他人に喋ったように思わせる。
 これとよく似たやり方をセルシャーナスは知っていた。盗賊ギルドが得意とする詐欺だ。

「相手は商人だぜ? そう上手く行くと思うか?」
「今朝、事件が起きて大騒ぎなんでしょ? 浮き足立ってる今なら、いくらでも切り口は作れそうな気がするけど」
「そういうのって、いいんですか……?」

 ラルサシャスがためらいがちに意見した。ごく真っ当な意見なのだが、一番気弱そうに聞こえるのが不思議だった。

「セルシャーナスの台詞じゃないけど、相手は商人なのよ。もし、あたし程度の口車に乗せられたって判ったところで、こんな小娘にしてやられましたなんて、そんなこと体面上言えるわけがないじゃない。大丈夫よ」

 どこがどう大丈夫なのかがさっぱり理解できないが、ラレインの言葉は自信にだけは満ちていた。
 結局いいのか悪いのかは回答されていなかったが、ラルサシャスは反論が思いつかなかったようで黙り込む。

「妙に自信あり気なのが怖えんだよな」

 何が小娘だよ、という意見は懐にしまったままセルシャーナスはぼやいた。
 自覚しているぶん、その辺りのギルドメンバーよりもよっぽど性質が悪い。

「あら、悪いけど失敗した事なんて滅多にないわよ」
「ルーク、本当かよ」

 エルフは小声で尋ねた。ルークは動揺した様子もなく、

「成功率が低いんだったらとっくに止めてるよ。……止められるよ」

 小さく呟いた。
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ネット用に改行は大幅に変更しました。これで読みやすくなっていればいいのですが。
筋力2の口の悪いエルフシーフと、知力23のソーサラー女子と、「幽霊の出現に気付いたかどうか」の判定で1ゾロを振った吟遊詩人が出ばってるシーンですが(苦笑)。
ここが一番手っ取り早く全員が喋るシーンだったり。

あと、おまけネタとして。
画像で見せた方が笑えると思うのですが、新刊タイトルを考えていた際のメモの殴り書き。
(手書きメモは自分以外判読不能と思われるので割愛します)
「幽霊」「毒草」「ギルド」「アサシン」「人身売買」「嘘」「離反」「人質」「隠し事」「交錯」「思惑」「沈む」「黒」
……ナニ、このマイナスの気を放つワード……(苦笑)。

立ち読みだけでも、していただければ嬉しいですー。


posted by 冬靖楓 at 03:22| Comment(0) | TrackBack(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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